本の表紙の一部にもなった「レンタチャイルド」です。
『物乞う仏陀』のクライマックスの話ですが、いやはや、本当に参りました、この取材は。

そもそも、僕としてはラストの話を、「親が赤ちゃんを乞食に貸し出す」ストーリーにしようとしていたんです。
以前から、貧しい母親が乞食に赤ちゃんを貸しているという噂を聞いていましたから。
で、それで取材を開始したんです。

ところが、調べてみてびっくり。
物乞いに訊いてみたらこういうわけです。
「私たちは貧乏をしていても、赤ちゃんを貸し出すことなんてしない。赤ちゃんの貸出は、マフィアがやっているんだ。奴らは誘拐してきた子供を貸出しているんだ」

これには驚きましたね。
で、どんどん調べてみると、「手足の切断」についての証言がでてきたんです。
本音をいうと、はじめは「ウソ」だと思っていました。インタビュー料を欲しいばかりに大袈裟な話をしているんじゃないかって。
しかし、誰に聞いても話の内容が一致するんです。手足を切断する年齢とか、コロニーの場所とか、誘拐される子供の数とか。

調べれば調べるほど、真実としか思えなくなってくる。
この時は、本当に参りました。不眠症に陥って、食事がまったくのどを通りません。歩いていても、ボロボロ涙がでてくるんです。
明らかに自分でも頭がおかしくなっていると思っていました。

たぶん、日本に連絡して愚痴の一言でもいえばだいぶ気持も紛れたでしょう。
しかし、当時僕はだれにもこんな取材をしにいくとは言ってませんでした。周囲の人には「遊びに行く」といって出て行ったんです。
というのも、その時僕は単に脱サラをしたばかりの25歳のガキんちょです。出版のあてもまったくありませんでした。とにかく、後先考えずに飛び込んで行っただけだったのです。
だから、偉そうに「実は取材をしていて」とか、「本を書きたくて」なんて言えませんでした。言ったところで、「25歳のガキんちょが書いたアジア旅行の話なんて誰が読むんだ」といわれるのがオチだったからです。
で、一人で毎日何十回と涙を流しながら、せっせと取材をした。それが、本のラストの話になったのです。

正直言うと、いつか、インドのラストの話だけをもう一度取材したいなという気持があります。
実は本には書かなかった「レンタチャイルド」やそれにまつわる話が山のようにあるんです。それをもう一度整理して形にしたいなと思っています。そんな機会があればいいですけどね。





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