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昔の歯医者というのは地獄絵図さながらの世界だったそうです。 ペンチやかなづちで、打って、割って、削って、引っこ抜くものだったのです。 麻酔などないわけですから、当然死ぬほど痛い。文献によれば、その痛みに耐えられず切腹して果てた武士もいたそうです。
こんな苦痛が和らいだのは「麻酔」の誕生以降でした。 日本では華岡青洲が麻酔を発明しましたが、欧米では見世物で使われていた「笑気ガス」が麻酔効果があることがわかって開発が進められたのです。 これによって、手術や抜歯から痛みがなくなり、医学・歯学が格段に発展していったのです。
さて、ではメデタシかといえば、そんなことはありません。 世界にはまだまだ「原始的な歯医者」がたくさんあります。インドにはペンチを持った歯医者が路上に座って「抜歯」を行っています。それこそバファリン程度の痛み止めを飲ませただけで、痩せこけた老人が細い腕でじわじわと歯を抜くのです。
かつて、私はこの光景を目撃したことがあります。 デリーかどこかだったと思います。通りに四人ぐらい「抜歯師」の爺さんが座っていました。 みんな壊れかけたラジカセを持っており、なぜか大音量でインド音楽を流していました。会話が聞こえないほどの音量です。 どうしてそんなことをしているのだろうと思っていましたが、すぐに訳が分かりました。患者は歯を抜かれる時に痛みのあまり悲痛な叫び声を上げるので、音楽でもってそれをかき消そうとしているのです。
そうそう『入れ歯の文化史―最古の「人工臓器」 』(文春新書)によれば、かつて欧米では歯医者は楽隊をつれており、患者が泣き叫ぶごとに音楽を演奏していたということです。 インドでは、今まさに路上で同じことが行われているということになるのでしょう。
ただし、こうした「歯医者」はインドでも稀です。 大部分の人が「とりあえずは歯医者といえる所」で虫歯治療をしています。(写真のような所inパキスタン・カラチ) しかし、現地の人に聞いて見ると、問題はあるそうですね。「麻酔」と「痛み止めの薬」があまり効かないんだそうです。 そのため日本とは違い、歯医者さんへいってもかなり抜く時の痛みと、抜いた後の痛みがあるそうです。 そんなことをちょっと頭の隅に置いておいて、発展途上国の貧しい人たちと話をする時にさりげなく「効く痛み止め」をあげたりするとすごく喜んでくれるものです。 僕はこれで相当得をした経験があります。
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